毎週月曜の朝、会議室に呼ばれるたびに胃が重くなっていました。数字が届かなかった週は決まって長い時間がかかり、終わるころには体の芯から力が抜けていました。それが何ヶ月も続いていました。
上司の言葉は、最初は「指導」に見えていました。でも、あるときから言い方が変わったと感じるようになりました。数字の話ではなく、私という人間を責めているような言葉が増えていきました。「なぜそんなこともできないのか」「お前には向いていない」——そういった言葉が、会議室を出た後も頭から離れませんでした。
夜、布団に入ってからも眠れない日が続きました。翌朝のことを考えると、自然と呼吸が浅くなりました。休日も、電話が来るかもしれないという緊張感が抜けなくて、気がつけば常にスマートフォンを手元に置くようになっていました。
辞めたいという気持ちは、ずっと前からありました。でも「30代での転職は難しい」「ここで逃げたら終わりだ」という言葉が頭の中で繰り返されて、なかなか動けずにいました。周りを見ると、同僚にも似たような顔をしている人がいて、みんなそうやって耐えているのだろうと思い込んでいました。
転機になったのは、ある週末のことでした。帰り道、駅のホームで電車を待ちながら、どこか遠くに消えてしまいたいと思っている自分に気がつきました。その感覚に気づいた瞬間、「このままでは本当にいけない」と、初めて本気で思いました。
その夜、退職代行という仕組みがあることを調べました。自分で直接言わなくても退職の手続きが進められると知って、少しだけ肩の荷が下りる気がしました。翌朝、申し込みを済ませ、あとは連絡を待つだけになりました。上司に自分の口で言わずに済むことが、正直いちばんありがたかったです。
退職が正式に完了したと連絡を受けた日、特別に大きな感情があったわけではありませんでした。ただ、その夜はひさしぶりにぐっすり眠れました。翌朝、いつもの時間に目が覚めた時、会議室のことを一瞬も考えていない自分に気がついて、ああ、終わったんだと思いました。
今は別の仕事をしています。営業という仕事そのものが嫌いになったわけではないと、今なら落ち着いて思えます。あの場所が合わなかっただけだと。もう少し早く動けていればと思うこともありますが、あの夜にようやく決断できた自分のことは、今でも正解だったと感じています。