派遣先に配属されて半年ほど経ったころ、少しずつ状況がおかしくなっていきました。業務の範囲が契約時の説明とはずいぶん違っていて、最初は「慣れればこなせるだろう」と思っていたのですが、月を追うごとに負担だけが増えていきました。
派遣元の担当者に相談したのは、その年の秋のことです。状況を説明すると、「まずは先方と関係を築くことが大事ですよ」と言われました。関係の問題ではない、と思いましたが、うまく言葉にできなくて、その日は電話を切りました。
それからも週に一度くらい担当者に連絡を入れましたが、返ってくる言葉はいつも似たようなもので、「もう少し様子を見ましょう」「先方にも事情があって」という方向に話が着地するのでした。何かが少しずつすり減っていく感じがしていました。
朝、派遣先へ向かう電車の中でお腹が痛くなるようになったのは、冬に入ったころだったと思います。ホームで降りるたびに足が重くなって、それでも「今日一日だけ」と言い聞かせながら改札を通っていました。
ある夜、もう自分一人では動けないと感じて、退職代行というものを調べ始めました。派遣の場合でも使えるのか不安でしたが、問い合わせてみると、派遣元への連絡も含めて対応してもらえると聞いて、少し気持ちが楽になりました。
依頼した翌日、派遣元と派遣先の双方に連絡が入りました。自分では何度伝えても変わらなかったことが、第三者が間に入ることでようやく手続きが動き出したのです。その日の夕方に「手続きを進めます」という連絡をもらったとき、久しぶりに肩の力が抜けました。
退職が確定してからしばらくは、何もする気になれずにぼんやりと過ごしていました。でもある朝、いつもより少し遅く目が覚めて、お腹が痛くないことに気づきました。それだけで、今日は大丈夫かもしれないと思えました。
あとから振り返ると、派遣元との認識のズレをひとりで埋めようとし続けていたことが、一番消耗していた部分だったと思います。誰かに間に入ってもらうことで、その役割をおろせたのだと感じています。
今は別の仕事をしています。契約内容と実態が違っていたら早めに声を上げることを、あの経験から学びました。自分を守ることを、もう後回しにしないようにしようと思っています。