最初におかしいと思ったのは、契約更新の面談が終わったあとのことでした。派遣元の担当者から「現場の希望どおりに調整しました」と言われたのに、派遣先のリーダーから聞いた話とまるで内容が違っていて、どちらの言葉を信じればいいのか分からなくなりました。
それ以来、何かあるたびに同じことが繰り返されました。担当者に相談すると「確認します」と言われ、数日が過ぎ、また別の食い違いが生まれる。小さなズレのはずが、気づけばどんどん積み重なっていました。
現場では普通に仕事をこなしていましたが、頭の中はいつもざわざわしていました。誰かに何かを伝えるたびに、それが正しく届いているのかどうか確かめる手段がない。その感覚が、じわじわと体に重さをもたらすようになりました。
ある週の終わりに、担当者から「来月の契約内容について変更があります」と電話がありました。こちらが同意した覚えのない変更でした。何度も「そんな話は聞いていません」と伝えましたが、「社内で決まったことなので」という返答が返ってくるだけでした。その夜、はじめて退職という言葉が頭に浮かびました。
自分で辞める意思を伝えようとしたとき、壁にぶつかりました。派遣元への連絡窓口は担当者だけで、その担当者との関係がすでに難しくなっていました。どう切り出せばいいのか、何度も言葉を考えては止まり、を繰り返しました。
知人から退職の手続きを代わりに進めてくれるサービスがあると聞き、藁にもすがる気持ちで相談しました。初めて話を聞いてもらったとき、自分がどれだけ長い間ひとりで抱えていたかを実感して、少しだけ涙が出ました。
その後は、自分が直接担当者と話すことなく、手続きが進んでいきました。不安がなかったといえば嘘になりますが、毎朝あのざわざわした感覚で目を覚ますことがなくなっただけで、ずいぶん楽になりました。
退職が完了したとき、特別な達成感はありませんでした。ただ、あの食い違いの連鎖から降りられたことへの、静かな安堵がありました。派遣という働き方は続けようと思っています。ただ、次は自分の声がちゃんと届く場所を選ぼうと、あのころよりも少しだけ慎重に考えられるようになりました。