もう限界だと気づいたのは、朝、最寄り駅の改札の前で足が止まった日のことでした。体がそれ以上前に進もうとしなくて、しばらくホームのベンチに座ったまま、次の電車も、そのまた次の電車も見送りました。派遣先に配属されてから半年が経っていました。
その日の夜、派遣会社の担当者に連絡を入れました。「明日から行けません。即日で辞めさせてほしい」と、できるだけ落ち着いた声で伝えようとしたのを覚えています。心のどこかで、あっさり話が進むと思っていました。派遣という働き方は、そういうものだと漠然と信じていた部分がありました。
でも、担当者の返答は想像と違いました。「契約期間中の即日退職は、まず派遣先との調整が必要で……」という言葉が続き、私はその時点で、話が簡単には終わらないと悟りました。頭がうまく働かなくて、相手の話を半分くらいしか聞けていなかったと思います。
その後、担当者から何度か電話がかかってきました。派遣先の部署から引き継ぎを求める話も出て、「せめて数日だけでも」という言葉が繰り返されました。こちらが断るたびに、少しずつ口調が変わっていく気がして、電話が鳴るたびに胃のあたりが重くなりました。
結局、即日退職は認められませんでした。最終的に出勤したのは、連絡した翌々日の一日だけでしたが、その一日がとても長く感じました。机の前に座りながら、早く終わってほしいとだけ思っていました。退職できたことよりも、あの一日を乗り越えたことの方が、今でもはっきり記憶に残っています。
後になって気づいたのは、派遣の契約には、正社員とは違う手続きの流れがあるということでした。派遣会社と派遣先、両方との関係が絡んでいて、「辞める」という意思だけでは動かせない部分が多かったのです。その仕組みを、事前に何も調べていませんでした。
あのとき、もう少し早い段階で誰かに相談していたら、違う結果になっていたかもしれないと思うことがあります。体が限界に来る前に動けていれば、あの改札の前で立ち尽くすこともなかったかもしれない。そう考えると、少し悔しい気持ちが残ります。
今は別の仕事をしていて、あの頃より気持ちが楽になりました。ただ、即日退職を希望するなら、手続きをどう進めるかを最初に確認しておくことが大事だと、身をもって学びました。準備のないまま動いてしまったことが、結局いちばん自分を苦しめたのだと思っています。